第65話    「海の濁り 死に水」   平成17年07月03日  

庄内の海しか知らないので、それが全国に通用するかどうかは分からない。

庄内でのクロ釣りにとって海水が濁りは、釣れるか釣れないかと云う判断の重要な目安のひとつとなっている。ご承知のように太平洋に比べ日本海は湖のようなものであるから干満の差は余り無い。潮の流れに早い、遅いがあるように、濁りもひとつではないことを知る必要がある。そこで濁りの原因について考えて見たい。

釣りの経験者なら殆どの人が経験していると思うが、日中急に風波が出てきて適度に濁りが入って急に釣れ出したとか、先日までの大波で海底の汚泥がかき回されて底が見えない位の適度に程々の濁りが入っている時等に思わぬ大漁となった事を経験している筈である。黒鯛などは海水が澄んでいる時よりも、適度な濁りを好む性質がある。

魚が釣れる濁りの原因
@荒天が数日続き海底の泥等が適度にかき回わされて濁りが出て出来たもの。
A近くに河川があって、雨が降り川水の増水し濁りが出たもの。
B岩礁地帯等に大量の雨水が降って、陸の土が流出などの原因で濁り出たもの。

等の濁りが良いと云われている。

数日良い天候が続いているのに何故か海底が青黒く濁っている時がある。ベテランの釣師たちはそれを死に水とか水が腐っていると云う表現をして極端に嫌う。この現象は通称ダシ風(陸風、庄内では東風を云う)が数日続いた時に起こる事がある現象である。東風(ダシ)は始め海水を沖へと追いやる。しかし時間が立つにつれて表層のみが沖へと流されて行くが、下層は反転して沖の方から岸の方へと流れて来る。そう云った事が何度か繰り返されて過去に陸上から流れて来た富栄養素を含んだ水が戻って来た時は、急激に大量のプランクトンが発生すると云われている。その為に魚族は呼吸が困難となり、魚は餌を食わなくなっているのだと教えられた事がある。その目安が同じ濁りでも青黒い濁りが、それである。表層は澄んでいるのに海底は青黒く淀んでいるから直ぐにそれと判別出来る。その濁りは特に入り江や小さな湾に囲まれたような場所で、数日に渡ってその水が滞留するから始末におえない。

この潮が海岸地帯に漂着することを昔の庄内の釣り人は寄り潮とも云っている。庄内で釣りをする方は釣れる釣れない以前の現象であるから是非に覚えていた方が良い。潮の流れを見ることも大切であるが、こう云った釣に関する自然現象の把握も大切である。これの大規模なものが、急激なプランクトンの発生に伴う赤潮の被害であるのではないかと考えられる。自然に必要以上の富栄養素を与えてしまった原因を正していけば、大なり小なり人間が自分の都合で海を汚染した結果がその海水塊を作ってしまったのである。ゴミを出さない、作らない&ゴミを捨てない、流さないと云う事を考えねばならないのではないか。

自分一人位なら大した事はない。これが積もり積もって公害の国を作る原因にもなっている。たかが、一人100gのゴミと云っても、釣り人1000万人の人が捨てれば一度に1000トンのゴミが生ずる。日本の人口12800万人が1100gのゴミを捨てて行くとなると、128000トンのゴミが一度に生ずる。この他にゴミは産業廃棄物もある。しかしゴミだけではない。家庭から生ずる生活廃水や工業用廃水の一部は未だに垂れ流し状態である。それらの一部が海に流れ込んで死に水と云った現象を引き起こしている。

釣り場を綺麗にとは最低限のマナーで日頃の生活においてゴミを出さない、作らないを習慣づけなければならない。意外と知らないところでゴミを、廃水を作ってしまっている事をもう少し考えようではないか?家庭内廃水は出来るだけ少なく、ゴミについては捨てるべきところにキチンと捨てる。これを守るだけでも海は意外と綺麗になると思っている。